参考情報:書評:子どもは40000回質問する(3/4)

第三回:好奇心にまつわる誤解

学校の役割と好奇心にまつわる大きな論点として、
①学校は社会で必要とされる学問的知識を大人が子どもに伝える場であるべきか?
②子どもたちが好奇心に駆られたらいつでもそれを探求できる場であるべきか?

といった論点があります。前者を「知識伝達」型教育、後者を「好奇心駆動」型教育と定義して論を勧めます。

先に今日の参考情報のポイントをまとめます。

1.好奇心を育むには知識のインプットが不可欠です。
2.つまり「知識伝達型」教育があるからこそ「好奇心駆動型」教育は機能する

◆「好奇心」駆動型教育の誕生
「好奇心」駆動型教育の原型は、実は18世紀後半のロマン主義に端を発します。思想家であるジャン=ジャック・ルソーは小説形式の「エーミール、あるいは教育について」の中で、子どもは大人から干渉されずに必要なことをなんでも学べるという主張をしました。彼の主張の特徴は、①知識伝達型教育の否定、②言葉によらずひたすら経験による学びへの集中でした。

◆「好奇心」駆動型教育の発展
彼の進歩的な思想は様々な教育者に影響を与えました。19世紀後半から20世紀にかけて、彼の思想に影響を受けたのはアメリカのデビット・ヒュームや、モンテッソーリ教育を生み出したマリア・モンテッソーリなどがいます。ちなみにドラマ教育もこの流れで生まれました。

また、彼の思想は、「インターネットによるすぐに知識にアクセスできる」現代では教育界の主流をなしています。彼らの理念は現代の進歩的な教育者は学校では伝統的な科目を教えるような従来の知識伝達型のスキルではなく、創造性や問題解決、批判思考、好奇心といった抽象的な能力を重視すべきという「学習スキル」や「21世紀型スキル」としてまとめられています。

これらの理念はび場とも一緒ですが、方法論や手法が本当に望ましいのかはきちんと検証する必要があります。結論を言うと方法論に関しては現代の学習科学が証明してきたことと矛盾しています。

◆「好奇心駆動型」教育の前提条件の誤り
「好奇心駆動型」教育が暗黙的に持っている前提条件は大きく分けて3つあります。

1.「子どもには指導役の大人は必要ない」
言い換えると、従来型の指導者あり型の教育よりも、指導者がなく子どもは自分たちで発見するような実験的な授業のほうが(発見学習、実験学習、構成主義)効率がいいという前提です。

優れた指導法800以上の指導方法をメタ分析した結果によると、学習効率を高める最も重要な要素は、①フィードバック、②指導の質、③直接的な指導であることが分かりました。指導は効果的なことが分かっています。

2.「事実・知識は創造性を台無しにする」
事実・知識の詰込み型教育は子どもたちの創造性を奪うのでやめるべきだという前提です。ですが、最近の研究では様々な知識の組み合わせから創造性が生まれるのであり、特に長期記憶に格納されている知識が創造性の源泉となることが分かってきました。

まさに模倣から創造は生まれるというわけです。

3.「学校では知識ではなく思考力を養うべきである」
算数など従来のように特定の分野における知識や方法論ではなく、どのような分野であれ通用する思考力を養うべきだという前提です。

物理学や医学、数学などのエキスパートを対象にした実験で、課題にひねりがくわえられ専門分野からそれると専門知識・方法論を応用するのは難しいということが分かっています。言い換えると、分野を問わずすべての分野で応用できるアルゴリズムはないということです。

「学習スキル」は特定の分野の特定の知識から有機的に構築されるのです。知識の幅が広がることで、知性の幅が広がり、ひいては新しい情報から引き出せる気づきも多くなります。つまり、「学習スキル」の土台になるのは蓄積された知識なのです。

◆知識は好奇心を持続させるガソリン
子どもの抱く好奇心の多くは拡散的好奇心であり好奇心を維持するには大人から与えられる知識が重要となります。なぜなら、あるテーマについて思考を巡らせるのに必要な基本知識がない限り、気まぐれな好奇心(拡散的好奇心)で面白い問いを考えても、十分な知識がない限り、「あっとけない」となるほうが自然です。つまり、子どもの幼児期においては好奇心はすぐに満たされることが大事なのです。

なのでび場ではできるだけ、子どもが好奇心で聞いたことについて子どもたちの知識の状態を見て、ヒントか答えを与えるようにしています。

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